2005-01-01から1年間の記事一覧

今年の1月から約10ヶ月間、『子供らは世界みんなの宝もの』〜鶴と蝶に導かれて〜を応援して頂き、ありがとうございました。私の手元にある原稿を何とか他の方にも読んでもらえないかとの思いでブログ上でアップすることを思いついたのが、昨日のように思い出…

数日後、私は希望の光を見つけた。現代の科学技術は、スペースシャトルで数百万マイル離れた月面に人間が降り立ち、安全に地球に帰ってくることができるし、潜水艦で深海の底に広がる未知の領域に入ることができる。どちらも完全に真っ暗な世界だ。これらの…

収入のある仕事を失った時は、絶望的な気持ちになった。慈悲深い労働者や納税者の親切な行為によって、政府からわずかな障害者年金を受け取ることはできたが、それだけで人間の尊厳を認められることはなかった。ただ生きるためだけに、“援助”をもらって暮ら…

「今日、医者にいずれ目が見えなくなるだろうと言われた」 私は日記にそう書いた。そして、色あせた小さな父の写真を取り出した。私には、父の写真を見ることがどうしても必要だった。“丸に立ち葵”の家紋の入った着物を着ている父を見ると、私の心はたとえ嵐…

愉快なお祭りムードが私達の間に広がれば広がるほど、サムとジェフはおもしろくないという態度を見せた。サムはイライラして、彼の顔には不満が出ていた。 「タネモリ、早くしろ。さっさと仕事の話をするのだ。」 星崎社長が部長に合図をし、部長は細かく印…

カリフォルニアの夏のシーズン真っ只中、日本から彼らがやって来た。麦わら帽子を被っている星崎氏は明らかに社長とわかるほど威厳があり、3人の紳士が、彼から少し離れて歩いていた。 「社長、お待ちしておりました。私どもがカリフォルニアをご案内させて…

次の4〜6週間は電話がジャンジャン鳴り、FAXはいつもガタガタと音を立てていた。サムとジェフは色々な交渉で、私達のオフィスは蜂の巣を突いたように活気に溢れていた。しかしその裏では、日本からの相談が私にやってくると、彼らは私に圧力をかけ、 「すべ…

夏が過ぎ、木の葉のダンスが見られる秋になった。シエラ山脈が色とりどりに染まると、冬が近づいていることを教えてくれる。そんなある日の午後、ユーレカ・ノースウエスト材木会社のサム・ゴールドスティン氏から手紙が来た。内容は、日本に新しい木材製品…

“鶴と蝶の夢”が私の元に帰ってくる前の年の秋、親友のメルブ・アメリーンが七面鳥を丸ごと一羽持ってきて、テーブルの上にドンと置いた。そのとたんに七面鳥がバタバタ動き、私は思わずびっくりした。白人の彼はカリフォルニア七面鳥産業会の支配人で、店の…

次回予告

出生の秘密、いかがでしたでしょうか? 母方の複雑な家庭事情や当時、いかに後継ぎとして長男が大切にされていたか、よく表れていたのではないかと思います。それがいいのか悪いのかは別にして、そのことによるご両親の苦悩は、今の私には想像を絶するものが…

タカエおばちゃんが最後に胤森家について話してくれたのは、1945年の晩春だった。新緑が虹色に輝くある春の日、私たちは、宮島名物のもみじ饅頭を食べながらお茶を飲んだ。おばちゃんと話した思い出は、私の宝物だ。夏が来たら、はまぐりを捕りに行こうと約…

「タカエおばちゃん。」私は不思議に思って、彼女に目をやった。 「どうして、おばあちゃんはそんなにお父さんに意地悪したのかな? お父さんは悪い人ではないのに。そうでしょ、おばちゃん?」 夕暮れとともに、私たち2人にも沈黙が訪れた。あたかも、ちょ…

タカエおばちゃんによれば、季節が過ぎても、世間は胤森家に情け容赦なかったそうだ。次の2年間は、父の真実と道徳的な価値観が徹底的に試された。父は無口な人だったため、自分で自分を追いやり、殻に閉じこもった。村人たちが人生に迷った時に拝みに行く…

助産婦の浜さんは、この村のリーダーに高く評価され、推薦された人だった。もちろん、今回が彼女にとって胤森家の出産に関わる初めてのことだった。彼女は自信を持って父に話しかけた。 「胤森さん、子供も母体も元気です。お祝いさせて下さい。子供さんは母…

胤森家が最初に喜ぶべき出来事は、母芳子が初めての子供を生んだ時のはずだった。母は興奮を隠せなかった。母は仏陀を信じて、「胤森家の後継ぎとなる男の子を授けてください」と願っていた。母の人生で最も重要な時だった。母は、胤森貞夫との結婚が“正しい…

私たちが広島の燃え続ける町から紅葉村へ逃げた後、この話の悲劇と真実がわかった。口数が少ない父親の胤森貞夫は、尊敬すべき人だった。父は、自分が不利な状況になるとわかっている時でさえ、常に約束と責任を背負って生きてきた。父の決断は常に正しいこ…

家の姓は、出生の遺産であり、最も高価な宝石のようなものである。国家は生まれては崩壊し、帝国は消えていくが、姓の不変性はいつの時代も変わらない。 私は、徳川幕府時代の侍一族の先祖に学び、胤森家の立派な後継者である長男として育てられた。唯一あっ…

次回予告

9月に入り、アメリカではハリケーン、日本でも台風や豪雨が多いですね。皆さん、お変わりありませんか? さて、ツアーが終わって今日で1週間が過ぎましたが、どうもまだ生活のペースが取り戻せない状態です。少し生活にメリハリがほしいので、次回より、この…

ごあいさつ

今日から9月ですね。少しずつ秋の気配を感じる今日この頃ですが、みなさまお元気でいらっしゃいますか?ツアー中にコメントして頂いた方、本当にありがとうございました。お返事ができなくて申し訳ありませんでしたが、とても心強く、携帯で何回も読ませて頂…

帰宅報告

みなさん、ごぶさたしていました。夕べ、1ヶ月ぶりに横浜に帰ってきました。ツアー中は、振り返るまもなく色々な体験をさせてもらい、まだ言葉にする余裕がありません。 帰ってきたら、朝日新聞の高崎支局から新聞が届いていました。アート展のことも掲載さ…

ジャパンプロダクションツアー

ジャパンプロダクションチームの来日が明日に迫りました。 私もツアーに出るので、このブログの更新も、しばらくお休みです。 ツアー中、どんなことが起こるのか、とても楽しみにしています。 以下、主なイベントを載せておきます。 では、どこかで皆さんと…

神戸でのお話会&交流会のお知らせ

高崎でのアート展に続き、神戸でもお話会ができることになりました。 2003年夏にも、このカフェでお話会をしました。自伝の最後にも、このお話会のことが書かれています。 カフェ ナフシャ(神戸市兵庫区)でのお話会&交流会 「子供らは世界みんなの宝もの…

テレビ放映のお知らせ

6月3日の最新情報という記事にも書きましたが、胤森さんのインタビューが放映されることになりましたので、お知らせします。 8月5日(金)午後6時55分〜9時48分 TBS系列 筑紫哲也ニュース23 特別番組 戦後60年特別企画“ヒロシマ” 被爆体験を描く…

アート展の詳細

群馬県高崎市でのアート展の詳細が決まりましたので、お知らせします。 胤森貴士トーマス・和解へのメッセージ展 〜被爆60周年 その時私は8歳だった〜2005年7月21日(木)〜2005年7月24日(日) AM10:00〜PM5:30 山田かまち美術館(広瀬画廊) 入場無料 20…

アート展開催のお知らせ

来日スケジュールを立てている中、ものすごい流れを感じています。急に色々なことが順調に決まりだしました。これも皆さんに応援していただいているおかげです。ありがとうございます。 そんな中、7/21〜7/26まで、急遽、群馬県の高崎市で、胤森さんのアート…

SFでのイベント報告

ここ横浜では連日暑い日が続いていました。 みなさんの地域ではいかがですか? さて、先日の6月25日、ジャパンプロダクションチームが主催したサンフランシスコでのイベントが、無事終わったそうです。70〜80人くらいの方に来ていただき、盛況だったとのこと…

カンパのお願い

みなさん、ご無沙汰しておりました。更新していないにもかかわらず、おかげさまで、ランキングは15位以内をキープしています。本当にありがとうございます。 胤森さん来日まで1ヶ月を切りました。ジャパンプロダクションチームは、7月18日に来日し、8月末ま…

最新情報

更新を終えてからの方が、なぜか人気blogランキングの順位があがっていて、驚いています。訪れてくれた皆さん、ありがとうございます。 さて、あとがきにも書きましたが、先日の5月27日、TBS筑紫哲也ニュース23の特別取材班の方が、サンフランシスコ近郊のラ…

管理人より

長い間、このお話におつきあい頂き、本当にありがとうございました。この4ヶ月半、ほぼ毎日のペースで更新してきました。毎朝、起きるとまず最初にこの更新をしていました。1つのことをやり終え、嬉しいと同時に少し寂しい気もしています。毎日日課のよう…

40年の歳月を経て、私はやっと父との本当の約束にたどり着きました。それは、“赦す”ことによって実現する“平和”でした。ヒロシマの被爆者からは“裏切り者”というニュアンスを含んだ声も聞こえてきそうですが、私は戦争に反対しているわけではなく、熱心な“平…