2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

タカエおばちゃんが最後に胤森家について話してくれたのは、1945年の晩春だった。新緑が虹色に輝くある春の日、私たちは、宮島名物のもみじ饅頭を食べながらお茶を飲んだ。おばちゃんと話した思い出は、私の宝物だ。夏が来たら、はまぐりを捕りに行こうと約…

「タカエおばちゃん。」私は不思議に思って、彼女に目をやった。 「どうして、おばあちゃんはそんなにお父さんに意地悪したのかな? お父さんは悪い人ではないのに。そうでしょ、おばちゃん?」 夕暮れとともに、私たち2人にも沈黙が訪れた。あたかも、ちょ…

タカエおばちゃんによれば、季節が過ぎても、世間は胤森家に情け容赦なかったそうだ。次の2年間は、父の真実と道徳的な価値観が徹底的に試された。父は無口な人だったため、自分で自分を追いやり、殻に閉じこもった。村人たちが人生に迷った時に拝みに行く…

助産婦の浜さんは、この村のリーダーに高く評価され、推薦された人だった。もちろん、今回が彼女にとって胤森家の出産に関わる初めてのことだった。彼女は自信を持って父に話しかけた。 「胤森さん、子供も母体も元気です。お祝いさせて下さい。子供さんは母…

胤森家が最初に喜ぶべき出来事は、母芳子が初めての子供を生んだ時のはずだった。母は興奮を隠せなかった。母は仏陀を信じて、「胤森家の後継ぎとなる男の子を授けてください」と願っていた。母の人生で最も重要な時だった。母は、胤森貞夫との結婚が“正しい…

私たちが広島の燃え続ける町から紅葉村へ逃げた後、この話の悲劇と真実がわかった。口数が少ない父親の胤森貞夫は、尊敬すべき人だった。父は、自分が不利な状況になるとわかっている時でさえ、常に約束と責任を背負って生きてきた。父の決断は常に正しいこ…

家の姓は、出生の遺産であり、最も高価な宝石のようなものである。国家は生まれては崩壊し、帝国は消えていくが、姓の不変性はいつの時代も変わらない。 私は、徳川幕府時代の侍一族の先祖に学び、胤森家の立派な後継者である長男として育てられた。唯一あっ…

次回予告

9月に入り、アメリカではハリケーン、日本でも台風や豪雨が多いですね。皆さん、お変わりありませんか? さて、ツアーが終わって今日で1週間が過ぎましたが、どうもまだ生活のペースが取り戻せない状態です。少し生活にメリハリがほしいので、次回より、この…

ごあいさつ

今日から9月ですね。少しずつ秋の気配を感じる今日この頃ですが、みなさまお元気でいらっしゃいますか?ツアー中にコメントして頂いた方、本当にありがとうございました。お返事ができなくて申し訳ありませんでしたが、とても心強く、携帯で何回も読ませて頂…