カリフォルニアの夏のシーズン真っ只中、日本から彼らがやって来た。麦わら帽子を被っている星崎氏は明らかに社長とわかるほど威厳があり、3人の紳士が、彼から少し離れて歩いていた。
「社長、お待ちしておりました。私どもがカリフォルニアをご案内させて頂けて光栄です。皆様に喜んで頂けるよう、旅の日程を組んでおりますので、ご安心ください。さあ、行きましょう!」


私は、彼らを歩道の縁に止めていた極上の車へと案内した。私は慎重に社長側のドアを開け、その後部長のドアを開けた。VIPは後部座席に乗るのが日本の慣習だが、私は部下の矢田部さんと黒川さんに後ろに乗ってもらった。彼らにリラックスしてもらうために。
「いかがですか、重役席の乗り心地は?」
私は軽く話しかけた。車内に軽い笑いが起こり、緊張が少し解けたようだった。ホテルに着いてチェックインを終え、夕食のため6時に迎えに来ることを丁寧に告げて、私は彼らと別れた。荷物を整理したり身だしなみを整えるのに3時間もあれば大丈夫だろう。


オフィスに戻るや否や、サムは私を怒鳴りつけた。
「あの日本人はどこへ行った! 私はずっとここで彼らを待っていたんだ!」
サムはの理性はひどく乱れていて、歯の1本も折られてもおかしくないほどだった。
「今夜の夕食の前に仕事の話ができるというのに! 俺の時間を無駄にしているのがわかっているのか!」
「サムさん、もう1度言っておきますが、どんなことがあってもこの私に全てを任せてくださいね。約束通り! 絶対に口を挟んだりしないように! いいですね。」


夕食会をする料亭に着いた時、女将が温かい笑顔で迎えてくれ、個室へと案内してくれた。しかし、サムとジェフがまだ着いていなかった。お客様が来るのをここで待っているようにと念を押したにも関わらず。12分後、彼らは遅れた上、手ぶらで現れた。記念の品として贈り物を持ってくるよう頼んでいたのに。そして彼はうぬぼれたまま挨拶をした。
「はじめまして。私達と取引する準備は出来ていますか? は、は、は!」


彼は名刺も持ち合わせていなかった。私はサムとジェフの無礼に対して社長に謝罪し、社長もそれを受け入れてくれた。山下部長から改めてホテルでの花や果物、チーズ、ワイン等のもてなしへの感謝の言葉を聞いたサムは、彼の本心を出した。
「タネモリ、なぜこんなところに金を使ったのだ。まだ何1つビジネスの話は始まっていないのだぞ!」


「では、始めましょう!」
私はサムには答えず、歓迎会を始めた。まず社長に冷えたビールを注ぎながら、もう1度来て頂いたことへの感謝の気持ちを表した。その後、サム、部長に続いてジェフ、矢田部さん、黒川さんの順にビールを注いだ。私の代わりに部長が乾杯の音頭を取ってくれた。乾杯が終わると、社長は空のグラスを持ってきて私にビールを注いでくれた。私は有難くその一杯を飲み干し、尊敬の意味を込めて、そのグラスを社長に差し出した。彼は躊躇することなくそれを受け取り、私達の信頼関係は最高度に達した。盛大に催した歓迎会は気に入られ、感謝された。