その時私はある声を聞いた。
「父の罪は子に引き継がれ、さらに3代、4代までも続くだろう。」
何の罪もない純真な私の子供や孫に裁きが下される原因となる無責任な行動を、父親としてどうして取ることができるだろう。私が“復讐”という矛盾した行動を犯した後、社会が彼らに何をするかわからない。もし無実の子供たちに苦しみを引き起こしたら、私は両親の魂に何と言ったらいいのだろう。私は答えを求めて叫んだ。


そこに父の顔が思い浮かび、父親はまたも次のように言った。この言葉は何度も何度も繰り返された教えであった。
「貴士、私は貴士の前で父親として、いや人間として見本のように生きてきた。また私の両親からの教えを貴士にも一つ残らず教えてきたはずだ。すべての生きている貴い命を尊敬して、決して無駄にするな、と教えたはずだよ。無害共栄、そして敵意悪逆。」


父が教えてくれた「侍の7つの教え」が甦ってきた。私はその時、父の教えが理解できていた。
「全ての行動はそれに見合う結果を生む」
終わりのない復讐と暴力は、更なる復讐と暴力を繰り返す。私が犯した間違った行動は、必ず報復を受ける。一つの復讐が次の復讐に繋がるという現実に向き合うことは重要なことだった。今自分の心を変えなければ、永遠に重荷を背負うことになることはわかっている。子供たちに復讐の結果を受け渡すことはできない。「この父親に約束したことは忘れてはいないでしょう?」と優しく囁かれた時、私の心に鋭い刃物が突き刺され、一瞬、悪血が流れ出した感じがした。


その時、10歳の末娘ロクサンの顔が浮かんだ。
「お父さんがこの長い間、何をしようとしているのかは分かっていますよ。アメリカ人の人たちにお父さんの苦しみ、悲しみを教えてあげると、今日まで生きてきていたのね。もし、お父さんが復讐に成功したとしたら、アメリカの子供たちもお父さんが苦しんだように苦しみ、悲しむのよ。そして、その復讐として彼達はお父さんの子供である私やお兄ちゃん達にも仕返しにやってくるのよ。それでいいのですか。お父さんはそれでも自分の目的が果たせたと言うのですか。それがおじいちゃんへ約束したことですか。」
そして、また娘が手を伸ばしながら言った。
「お父さん、他の道はないの?」
彼女の二つの目は、朝露のように、キラキラ光っていた。


その時初めて、父親である私が自分の子供から大きな貴重なものを教えられた。私はなんて馬鹿な父親だったのか。私の子供もまたアメリカの子供もみんな同じ子供なのだ。子供に自分の苦しみ、残酷な戦争の体験を押しつけることは、父親の「侍の7つの教え」を裏切ることと同じであると私は初めて気がついたのだ。