ある晩、子供達がみんな寝静まった後、遠くで聞こえる犬の遠吠えがかすかに静けさを破った。重く滞った空気が居間を満たしていた。突然、妻が私の真正面に立ちはだかった。
「あなたの望んでいるものは何なの?」まるで死にかけている人に聞くように私に尋ねた。
「何があなたの内部を引き裂いているのかをきちんと見つけないと。私にちゃんと言ってちょうだい。私はあなたの妻なのよ。何か言ってくれないと助けることもできないじゃない。ともかく今あなたは幸せじゃないことは確かよ。今何をしているにせよ、それはこれから先の人生にあなたが本当にやっていきたいことではないっていうことも、私にはわかっているわ。」
「これ以上何を望むというんだ。そりゃあ8時から5時までという勤務形態じゃないけれど、ここ10年牧師として働いた間、子供達と過ごした時間を合わせたよりも、ずっと長く彼らと共に過ごせる仕事をやっと見つけたじゃないか。父親としてこれ以上何を望むというのだ。」
「いいえ、それは違うわ!」と妻はじわじわ私の方に寄ってきた。
「お願いよ。スパッと立ち直るか、そうでなければ出て行ってちょうだい! 私は3人の子供達にあなたの絶望やふさぎ込みに影響を受けて欲しくないのよ。どうしてすぐ日本に戻り、あなたが探しているものを見つけようとしないの。それが何であるにしろ、あなた自身がこの先どこに行きたいのか、そして何をしたいのかを知る手がかりとなる答えを見つけるまで、そこにいたらいいのよ。」
「日本に戻るってどういうことなんだ?君と子供達を残して永久に日本に帰るという意味なのか?」
ああ・・・仲村先生のような日本人女性と結婚していたら、私の痛みを理解し、感じてもらえただろうに・・・。


3人の子供達のことは心配しないでいいと約束してくれた。妻が子供達の世話をし、私が戻るのを待つというのだ。私は無表情にそこに座っていた。ただ目だけはぼんやりと焦点を遠くに合わせていた。


今日は12月15日。子供達が私の誕生日を覚えていてくれた。彼らは喜びを私と分かち合い、何度も何度も私を誇りに思っているし、愛しているといってくれた。
「お父さんはこの広い世界の中で一番素敵なお父さんよ。」
娘のロクサンが私の膝に座って叫んだ。私には申し分のない家族がある。それは疑う余地のない事実だ。3人の子供達と妻が、愛と思いやりの気持ちを持って私を見守ってくれているのだから。これ以上何を求めることがあるだろうか。私は彼らの父親として、前に進む時なのだ。


私の気がかりである3人の子供達が、ケーキとアイスクリームを食べる前に私に封筒を手渡してくれた。それには「お父さんへ 素敵な旅を!」と書かれていた。封筒の中身は飛行機のチケットで、日本への往復のものだった。私はお正月を含めた年始の休暇を日本で過ごすのを楽しみにしていた。それは言葉にならないほどだった。後になって知ったことだが、子供たちはめいめいの口座から貯金を引き出し、妻が私へのプレゼントとして飛行機のチケットを買う足しにしていたらしい。私の心は家族の優しさと思いやりある理解に感動し、さらに学びを深めたのだった。