私は彼に様々ないくつかの教会の関係者の名前を教えて家へ送っていった。彼らは私の友人であり、マークが彼らと連絡を取れるように取り計らったのだ。月曜日の朝に会う約束をし、私はその後、ガソリンがすっかりなくなるまであてもなくドライブした。私が家に着くと、妻と娘はクリスマス・ツリーの飾りを買って家に帰っていた。私はマークが苦しい立場に立たされていることを妻には黙っておいた。


月曜日の朝マークに会うと、彼は恐怖におののいていた。
「あなたは何人かの牧師のお名前を教えて下さいましたが、私は断られるのが怖くて会うことができません。その方たちはあなたのご友人です。馬鹿なことをしたと非難されるのが怖いのです。半年前に自分の身を守るためにやってしまったことを取り消すことはできないのです。自分が投げたブーメランが返ってきているのです。」


私はマークと彼の家族に対して、自分が何をすればいいのか分かっていた。完璧にやり遂げるまでは妻に知られるわけにはいかなかった。私は以前設定した貸付限度額を超える35万円を銀行から借りた。それは今まで自分たちの為に使ったことがないような大金だった。


ある朝、朝食の準備をしている時、妻と私はクリスチャンとしての義務について話し合ったが、決着はつかなかった。
「ねえ、あなた。マークとご家族を逆境から助けてあげたいというあなたの気持ちは分かるわ。昨日は1日中引越しの手伝いをしてあげていたわね。今日はあの人達、朝食を食べに来るのよ。それに、道中食べられるようにとドーナツを1ダースも買ったわよね。それどころか、彼の娘さん達にプレゼントをすでに買っているなんて・・・。これ以上何て言えばいいのかしら。何であなたと結婚してしまったのかしらね・・・。」
「すべてうまくいくさ。」
それが当てのない言葉だということは私にも分かっていた。それでも妻は、私の行動を大目に見てくれた。マークの娘はプレゼントに大喜びだった。今朝の朝食は長い間思い出に残るだろう。私達はドーナツを手渡し、マークの妻の両親が住むアラバマ州モントゴメリーへと向かう一家を見送った。彼らの乗ったトラックが角を曲がって見えなくなった時、私はほっとしてため息が出た。もちろん、金はあげたのではなく貸したのだった。返済期限は決めなかったが、彼には返済義務があることは分かっていたはずだ。私はマークと握手しただけだった。


ある夜、仕事から帰って玄関に足を踏み入れると大騒ぎになっていた。妻が預金通帳を持って私を待っていたのだ。次の瞬間、彼女は私を叩いて叫んだ。
「いったいどういうことなのか説明してちょうだい!」
彼女は自分の言葉で喉が詰まりそうになっていた。
「こんなこと信じられないわ! 私に隠れてこっそりマークにこんなことをしてあげているなんて。これでも私はあなたの妻なの?」
妻が私に空っぽの通帳を投げつけた時、私は1ミリも動けなかった。地獄が自然に燃え尽きるのを待つしかなかった。おそらく、稲妻に打たれて死ぬ方が、妻に殺されるよりももっと楽で痛みも少ないだろう。


しばらくして彼女は正気に戻った。突然、妻は理性的になり、静かにこう言った。
「あなた達の借用証書を見せてもらいましょうか。」
彼女のソフトな言葉遣いが狩人の矢のように突き刺さった。
「では、あの人の転居先はご存知なの?」
私は頭を抱え込んだ。そして、彼女が犬の尻尾を少しずつ切り刻むような真似をするよりも一気に叩き切ってくれるよう願った。


やっとシャワーを浴びて着替える頃にはすっかりお腹が空いていた。妻は書斎へ行って、中から鍵をかけてしまった。テーブルの上には何もなかった。私の夕食はどうなってしまったのだろう。私は子供部屋に向かった。
「お父さん、お母さんが怒るのを分かっていたんでしょ?」ジョナサンが言った。
「お父さん、お母さんはお父さんがマークさんにしたことを怒っているんじゃないと思うよ。お母さんは最初に言ってほしかったんだよ。お父さんはいつも黙ってやってしまうから・・・。」
次男のネーサンはおとなしかったが、いつも率直に自分の気持ちを表していた。そんな彼が父親の思慮のなさを慰めてくれた。もちろん、かわいい娘も何も言わずに座っていた。私は子供達を抱きしめ、私達がどれだけ彼らを愛しているか、1人1人に言い聞かせ、おやすみのキスをした。私は自分の頭の中を整理する必要があった。寝ている妻の横に静かにもぐりこんだのは、真夜中過ぎだった。私はくるりと彼女に背を向けて眠りについた。