1ヶ月が過ぎ、私はマークが会いに来るのではないかと期待していた。彼とは和解する必要があると感じていたのだ。月曜日の夜、玄関のベルが鳴った。マークかと思い、鍵穴から覗いてみると、何とそこにはオスカー牧師が立っていた。
「こんばんは・・・入ってもよろしいかな?」
(彼は欲しいものはすべて手にいれたはず。いったい私に何の用があるというのか?)私は心の中でつぶやいた。そして、渋々彼を中へ入れた。


「トム先生、学校へ戻って指揮を取ってはくれまいか? ただし、権限は与えられないが。君には今まで君に従ってきた人間を満足させてほしいだけなのだ。」
「それがどうしたというのですか? 私がいなくてもあなたは学校と教会を運営できているのでしょう?」
「私が君を解雇したことが知れてからというもの、自宅と教会に電話がひっきりなしにかかってくるのだ。自宅にまで押しかけ、君に全ての権限を与えて校長の地位に戻さないと子供をやめさせる、と要求する者さえいるのだよ。彼らは教会への援助もやめると脅してくるのだ。」
そうでしょう、こうなることは分かっていたのですよ、とどんなに言いたかったことか。しかし私は、餌を捕るタイミングが来るまで鋭い爪を見せるわけにはいかなかった。沈黙を守り、オスカーは一晩中やきもきしていた。結局何の解決策も見出せずに彼は帰っていった。


感謝祭が過ぎ、通りや店先には一足早くクリスマスの装飾が飾られるようになった。私が書斎にいる時、玄関のベルが何度も鳴った。私は長男のジョナサンを見に行かせた。
「お父さん、マークさんが来たみたいだよ。お父さんが校長をしていた時に学校で教えていた人と同じ人だ。お父さんに会いたがっているよ。」
なぜ今頃になって私に会いに来たのだろうか? この春以降、彼とは言葉を交わしていなかった。私が必要としていた時、彼は明らかに私と反対の立場をとっていた。彼に非難の言葉を浴びせたかった。
「お父さん、どうするの?」
「中に入るように伝えなさい。そして居間で待っていてもらいなさい。頼んだよ。」


もしかしたら、彼は急に心を入れ替えて和解しに来たのかもしれない。私はそう願って、楽天的に構えた。今日が私の重荷が取り払われる日なのかもしれないと思うと、急に足取りが軽くなった。私はマークを心から歓迎した。すると驚いたことに、彼の声は蚊が鳴くより小さかった。
「ええと・・・トム先生・・・昨晩、礼拝後にオスカー牧師に呼ばれました。そして、満足のいく説明もないまま、即時解雇を言い渡されたのです。」


「何だって?」
私はその言葉をもう一度聞きたかった。彼が自分の発した言葉で苦しむのを見たかったのだ。“人は自分で撒いたものは全て自分で刈り取るであろう”というのが聖書の戒めだった。私は彼にこの戒めを噛み締めさせたかった。“我が身より出ずるものは、いずれ我が身に戻り来る”。私はとても気分がよかった。もし私が解雇された時、マークが私の味方となり弁護してくれていたならば、彼が解雇されることはなかったに違いない。彼は失敗したのだ。


こんなことを心ひそかに思っている時、彼の幼い純真な娘2人が現れた。突然、私の胸は痛んだ。この2人の娘には何の関係もないのだ。そして自分以外の何かが、私の自惚れを抑え始めた。
「マーク、ここに滞在しながら他の教会の仕事を探すかい?」
私は彼が背負った重荷を分かち合うことにした。
「いいえ、ダメよ! あなた、頭がおかしくなったの?」
妻がゴミ捨て場の野良犬のように怒り狂った。彼女は、私に反旗を翻した教会の人間と同じ空気を吸うことが我慢ならなかったのだ。