私は今年の夏、300ドルを稼いだフレズノの“平和の労働”でホッチンス氏に出会ったのだった。彼が白いキャデラックに乗って、私に会いに移民労働施設にやってきた日のことを私はよく覚えていた。白いパナマスーツを着こなし、白いパナマ帽をかぶっていた。スーツのズボンにはピシッとアイロンがかけられていた。珍しい白い靴をコツコツといわせながら、彼は正面玄関から入ってきて、穏やかにキャンプの責任者にこう告げた。
「トミー・タネモリを探しているのですが」
彼は私を彼の教会まで乗せていってくれた上、何回か家にまで招待してくれた人だった。それは夏の思い出になっていた。


「早く開けて読んでみろよ。」
ラッセルが急かした。私の手は震えていた。手紙は1月29日の日付だった。なぜ、この手紙は速達で送られたのだろうか?


『親愛なる神の道の息子よ

主は御子達に必ず恵みを下さる。主は私達を祝福し、この夏君を遣わされた。私達の出会いはとても短く、一風変わった環境下ではあったが、主は私達にもう一人の主の“息子”を遣わされたのだ。君は数多いる大学生の一人だったが、主が私達にお与え下さった豊かな恵みの一部なのだ。
この手紙を受け取って、さぞ驚いているだろうね。去年の夏、君がミネソタへ旅立つときに電話で話して以来話をしていないのだからね。
主は私達の事業を大きくして下さったのだよ。それで、主が何を望んでおられるのか、この恵みをどう分かち合えばよいのか、私達はこの3週間祈り続けたのだよ。その祈りの後、私達夫婦は主が君の名前を告げられたと確信したのだ。そして、一刻も早くこの手紙を送らなければ、と感じたのだよ。
私達が何を送ればよいのか、また、いくら送ればよいのかを知るすべはなかったのだが
(1)最初の小切手の300ドルは君の学校の費用だ。(もっと必要であれば、早く知らせてくれたまえ)
(2)2番目の小切手の25ドルは君の小遣いだ。
ミネソタはとても寒い地方だから、君と “ガールフレンド“に一杯のおいしいホット・チョコレートを買うお金が必要だね?
主が私達に成功させて下さったのは、君が大学を卒業するまでの3年間私達に君を援助させるためなのだ、と私達は確信しているのだよ。
主が慈悲深い愛で、君を私達に遣わされたことに感謝して。 敬具

神の道の父母より(レオナルド・ホッチンス)』


気が付いてみると私は“リトル・ディッパー“でルームメイトやたくさんの生徒に囲まれていたのだが、一人だけで神と共にいるような気がした。私は初めてホット・チョコレートを注文した。カップを手で包み、あかぎれの手が癒されていくその温かさを感じた。ホット・チョコレートが唇に触れるたびに、温かさとクリーミーな感触、そして甘い味を楽しんだ。チョコレートの香りはローストした栗のように私の鼻をくすぐった。豊かな味は私の舌を魅了した。


感謝の気持ちで、私の傷ついた心は癒されていった。私はルームメイトに出発を祝ってくれたことに感謝し、“リトル・ディッパー”を後にした。雪景色の暗い空の下、私は何回も目をこすってみた。そして、再び空を眺めた。数え切れないほどの星が、私の“心”のテストを祝福してくれていた。もう神に喧嘩を売るのはやめようと心に誓った。