1952年12月15日は私の15歳の誕生日だった。しかし私は何の喜びも感じなかった。私は誰とも連絡を取ることが出来ない、寒い拘置所の中にいた。私は遠くに去ってしまった父の教えに立ち向かうことができなかった。私から父を拒絶してもなお、父が私を呼ぶことを恐れていた。年の瀬も押し迫り、村人たちはあちこちに慌てて走り回っていた。


12月28日、佐津子が突然やってきた。彼女は疑わしい優しさで言った。
「村田先生にこのお歳暮を持っていってくれる?」
村田先生は中学校の担任で、佐津子の好きな先生だった。村田先生は担任の間、姉をしっかり支援してくれていた。
「何で僕が持っていかなくてはならないんだ? 姉さんが胤森家の長じゃないか?」
私は怪しげに尋ねた。
「先生はあなたに会いたがっているのよ。」
彼女はお願いするように笑顔を投げかけた。姉は今までの償いをしようとしているのだろうか? 私の心を覆っている氷の塊がわずかに溶け、姉に同意した。しかし汽車に乗っている途中で、何か裏があるのではという予感がしていた。私は窓に映っている鬼のような彼女の顔を見た。


村田先生は大名の子孫で、壮大な土地を持っていた。伝統的な美しい家は、広い水田を見下ろす丘の上に建っていた。先生は私が来るのを待っていたかのように、玄関で私を暖かく迎えてくれた。家の中は氷のように冷たく不気味で、異常に静かだった。走り回るネズミの音まではっきり聞こえ、私は背筋がぞくぞくした。


先生は私を書斎に案内し、こたつに入るよう勧めてくれた。そして台所から、皿に美しく並べられた食べ物を持ってきて、私の前に置いた。こんな親切なもてなしは普通ではなかった。私たちはかつてこんなに近づいたことはなかったし、実際学校では、無作法をしたことでしばしば彼に呼び出されていた。私はいつものようにお腹が空いていたが、食べることができなかった。いったい私は何を期待されているのだろう?


私をここに来た目的は、単にお歳暮を届けるだけではないことは明らかだった。先生はあたかも私に何か言いたそうにソワソワし、酒をついでは急いでそれを飲んでいた。話し始める度に躊躇しては、また酒をついでいた。
「先生、大丈夫ですか?」
私は尋ねた。彼はさらにもう一杯酒を飲むと、深く息を吸いながら私の目をまっすぐに見て言った。
「胤森、君の振る舞いがお姉さんにとても心配をかけていることは聞いている。君は家族に恥を与えたのだ。」
(今畜生! この2人は俺を裏切ったな!)私は心の中で叫んだ。そして姉の甘い優しさと先生の親切なもてなしが何だったのかがわかった。罠だったのだ!