祖母のトメとその家族は、胤森家の子供たちが草を探し回っている時に白いご飯をお腹いっぱい食べ、比較的楽に生活し続けていた。夏や収穫の季節は、何人かの親切なお百姓さんたちが私達に、彼らの畑の取り残した果物や野菜や木の実を取ることを許してくれた。しかし冬は全く違っていた。情け容赦ない北風が、私たちの薄い服の上から魂の奥深くまで引き裂いていった。


佐津子は、凍りついた空の下、雪の下に埋まっている食べられる草を探してくるようにと私を送り出したものだった。手はあかぎれで、片方の手で氷の表面を割り、もう片方の手を口に入れて暖めながら掘り進めた。その作業があまりにもつらかったので、時々何も取らずに手ぶらで帰ったりしたこともあった。佐津子は私が責任を果たせなかったことを厳しく非難し、食事抜きでそのまま寝させられた。それでも雪を掘る痛みと屈辱の拷問に耐えるより、姉が与える罰の方を選んだこともあった。


私はよく祖母に誠心誠意頼んでみた。
「おばあちゃん、僕たちは他の孫たちと同じ孫ではないのですか。」
と、彼女の家族と私達を平等に扱ってくれるよう哀願した。しかし彼女の心は、何物をも通さないカチカチに凍りついた氷のようだった。私たちの目の前でわざとものを食べ、軽蔑したようにそのくずを私の通るところに捨てた。恥ずかしさに耐えながら、私は川のそばのゴミ捨て場で食べ物を探し、ゴミ箱やゴミの山をあさるしかなかった。しかしそれよりも何よりも、私は祖母が気取り屋で偉ぶっているところが一番嫌いだった。


父の侍の教えは、空っぽのお腹を満足させることはできなかった。ある土曜日、祖父母が町から出ていることを知り、私は彼らの家の裏口へと野良猫のように近づいていった。
「どうして? 裏口に内側から鍵がかかっているなんて、普通じゃないぞ。」
と、私は独り言をつぶやいた。辺りに誰もいないことを確認して、左手でドアの隣の小窓を割った。それから、誰かがそこに捨てていった小さな木製の箱の上に立つと、何とか手が届き、ドアの鍵を開けることが出来た。


私は敷居に唾を吐きかけて音が出ないように障子を開け、おひつ(ご飯が入っている入れ物)が置いてある台所にこっそりと入った。炊き上がった白米のキラキラ光る山に私は息を飲んだ。私のお腹はぐうぐうと大きな音を立てて鳴った。これ以上美しいものが他にあるだろうか。それはまるで、山頂の雪が滝のように落ちている荘厳な富士山の頂のように見えた。慎重に慎重に小さなしゃもじを使って、誰もご飯に触ったことなど気づかないように表面の一部を上手にすくい取った。そしてそのご飯を自分の口へとむさぼるように押し込んだ。
「しまった! 遅すぎた!」
私の左手から滴った血が白いご飯の上に落ちて、あれほど注意深く表面を削ったのを台無しにしていることに気づいた。それが日の丸のようだったことに私は驚いた。あまりに集中していたので、家に押し入る時に怪我をしていたことにさえ気づいていなかったのだ。どうして窓を割る時に、素手ではなく石を使わなかったのだろうか。それは本当に後の祭りだった。自分の愚かさを嘆いても遅すぎた。もう隠すことはできないと覚悟をしながら、両手でご飯をつかんで口の中に詰め込んだ。私の心には、いかめしい父の顔がしっかりと現れていた。


翌日、祖母は長くて頑丈な竹の棒をしっかりと手に握って、私達の家に乗り込んできた。私の左手に巻きつけてある布がすべてを物語っていた。
「この盗人め! お前が今後二度と左手を使えないようにしてやる! お前の折れた手が、この悪事をお前がしたということをみんなに証明するだろうさ!」
そう叫んで、彼女は激しい怒りを全身に込めて、何度も何度も私を叩いた。私の左手と左腕は、彼女の怒りが収まるまで散々に殴られ、ひどく腫れ上がっていた。歯をくいしばり、私は罰を受けた。彼女が叩くのを冷静に、本当の侍の息子のように受け止めていた。彼女に私の泣いているところを見せて満足させたくなかった。心の中で父の言葉がこだましていた。
「すべての行動にはその結果が常にある。それを受け止める準備をしておくのだよ。」


その夜遅く、私は父のお墓に行き、後悔の涙をぽたぽたと地面に落とした。自分の利己的な心が家族に恥をかかせてしまったことを謝った。私は父の名を汚してしまったのだ。