10月のある日曜日の朝の奉仕で、新しい牧師のケン・ノートンの優しさの中にある情熱やカリスマ的な説教スタイルが多くの聴衆のハートをつかんだ。「アーメン!」と、瞬間的に強く叫ぶその声は、教会の内陣に大きく木霊した。最終票は上級牧師になるケン・ノートン師を歓迎するための票が投じられた。当初、保守的だった意見に反して、教会は、花が咲いたように栄えた。しかし、それは切花のように短い命だった。


彼の出現は、消えていた情熱の“激しい炎”を掻き立てられた多くの人々に活気を与えた。その日の彼の説教は過去の実績となり、直ちに牧師の職を認められた。しかしそれは、私にとっては悪夢であった。涙を浮かべながら近づいて来たペギーが言った。あなたの仕事は彼の牧師の職が風化し侵されないように、サポートすることなのね、と。その様子を見ていた彼は、教会に私の派閥があると勘違いした。


私はケン・ノートン教会長との激しい争いに巻き込まれた。スーザン・パーカーが先頭に立って、私の副教会長としての存在はケン・ノートンの全てに邪魔になる、いや、全てをかけて胤森牧師はあなたの教会が栄えないようにするので、1日も早く適当な理由を見つけて彼の存在を消すべきだと訴え、半分の教会のメンバーは大きく動き出した。そのために、私は血を吐き出す胃潰瘍になり、2度の入院を余儀なくされた。なぜ牧師同士が争わなければならないのか、なぜ何のために一命を懸けて牧師の世界に入ってきたのか。ペギーとよく心を悩ましていた。


「こんにちは、胤森牧師。」
ドクター・マイケル・ブラックが病室へ入って来た。彼はかつて、前に出血した潰瘍を治療してくれた医者だった。彼は脈をとりながら
「潰瘍の出血で入院するのは2度目ですね。潰瘍はすでに胃まで貫通していて、対処方法がありません。私の注意をしっかり聞いて守ってきたとは思えませんね。出血するとどうなるか、はっきり伝えていたはずですが。」
「あー、再発ですか。」
私はカップ一杯のお酢を飲んだ時のように顔をしぼませ苦笑した。
「先生、どれくらい悪いのですか?」
「胤森牧師、あなたの2人の息子さんが成長する間、牧師を続けながらも平凡な幸せを可能にする方法は、他にあるでしょう。」
「おお!それは一体何ですか? 教えてください。」
「まあ、あなたも知っているように説教者の大部分を見ていると、彼らは、たくさんの聖職服を消耗しますが、自らの“ハート(心)”を与えることはしません。所詮、雇われ牧師の彼らにとって、牧師とは1つの“職業”でしかないのです。そのようにあなたも割り切れるなら、今まで通り、聖職者でいることは可能ですが、あなたのように心や身体を献身し続けることは、あなたの命取りになりかねません。」 
「先生。ちょっと待ってください!それは魚に陸で住めと命じているようなものではないですか。」


次の日の午前9時頃、目に涙をためながら妻がやって来た。彼女は私を安心させるために、子供達のことはしっかり面倒をみるから心配しないでと言った。そして、もう警告のサインを無視している余裕はないと伝えた。仮に医者の忠告を無視し続けるならば、子供達にも、お父さんはもう長くないかもしれないという病状をはっきり伝えておかなければならないし、彼の専門的な助言を聴くことは、牧師としてのあなたが、多くの人に精神的なアドバイスをしているのと同じように重要なことだと。


私はなぜいつも妻から説教されるのか分からなかったが、こうしなければならないと決めつけて忠告する人たちを、妻も含めて軽蔑した。私は落ち込んでいたので、誰もそれ以上話しかけてこなかった。妻の言ったことに気をもんでいたが、それ以上に、秘書のペギーが見舞いに来た以外に教会のスタッフや仲間達が誰も来ないことに苛立ちを覚えていた。一時の激情に駆られ胸が苦しくなった、彼らは、たった5ブロック先の病院を訪れる時間もないのだろうか。次の日の朝、医者は2週間の安静を条件に厳格な指示をして病院から解放してくれた。