光り輝いたミネソタの秋がやって来た。ジョイスは大学最後の年を迎えていた。私は個人的にジョイスの父親に会って、彼から受け入れてもらえるような機会をうかがっていた。ところが、彼は激しく怒っていた。
「私は娘に会いに来たのであって、日本人のお前に会いに来たわけではない。お前は日本帝国政府が1930年代に中国で私達にした残虐行為の罪を受け止めるべきだ。私の娘の残りの人生をお前に預けることは絶対に許さない。私にとって、お前はただの戦争犯罪者でしかない。もしできることなら、この素手を使って自分の心を晴らしたいくらいだ。」
彼は体全体を震わせていた。恐ろしい記憶が彼の頭の中や心を襲ったのだろう。
「お父さん、私に5分間、時間を頂けないでしょうか?」
「いいだろう。5分だけだぞ!」
彼はそう言って横を向くと、私が思いを述べ立てる間ずっと腕時計を見ていた。彼は認めなかったが、ジョイスと私は、文化の違いや憎しみを私達が越えられることを信じていた。嫌悪や不信感で凍りついてしまったすべての人々の心に神の愛のメッセージを届けるということが私達2人の願いだった。次の日、私は結婚の許可を得るために役所を訪れた。


私の中国系アメリカ人女性との結婚は大胆不敵なものとなった。ジョイスが私に叫んだ。
「これは私達の結婚式なのよ。それに、あなたは広島からお姉さんを招待客として呼ぶのですか? 彼女は私達の結婚式を歓迎するつもりはあるのですか? あなたが何度もお願いしてもまだ答えてくれない。いったい何回彼女に手紙を書いたと思っているの?」
結局、私達の結婚式は文化が交錯するものとなった。かつては中国人と日本人は敵同士であり、私達の結婚が両国を平和へと導くことは無理であろう。そしてあの姉が、自分の弟が中国人女性と結婚することを決して許すことはあるまい。どうして彼女がこのような不名誉な結婚式に参加をすることができるだろうか。姉の非難が私の頭の中を駆け巡っている間、私は仲村先生にここにいてほしいと切に願った。


「私は決して家族から援助は受けないわ。」ジョイスは軽蔑した口調で言った。
「私が家族から結婚式への金銭的な援助をつきかえした理由は、あなたをきつい言われ方や危害から守るためだけよ。私達が10セントでも受け取れば、きっと次はあなたの人間的な欠如を言ってくるわ。私は私達の結婚式を彼らの表面的な寛大さで汚されたくないの。私はあなたがあなたであることを誇りに思うわ。私はたとえ家族であろうと、人種や職業だけであなたを普通以下と思っている人を軽蔑するわ。」
彼女の母親や兄弟が私達の結婚式に来たがっている理由を知った時、私は完全に挫折してしまった。
「彼らはジョンソン医師から、あなたの被爆が子供には影響しないという報告を受けたおかげで、私達の結婚式を喜んで受け入れたがっているの。それがすべてだったのよ! 他には何もないの!」