ある日曜日、私達は疲れきって施設内で休日を過ごしていた。ぶらぶらと歩いていると、私はビールやソーダなどの炭酸飲料や甘いキャンディーなどを買うことができる売店を見つけた。たくさんの労働者たちがお店の回りに集まって、食べたり飲んだりしながらつかの間の休みを楽しんでいるようだった。私は舌をベロベロ舐めるまねをして、つたない英語で店員に尋ねた。彼にアイスキャンディーがほしいと伝えたかったが、私はまるでサーカスの猿のようだった。店員は最初私を無視していたが、その後投げやりにこう言った。
「おい坊や、ここでは中国語は通じないよ。もう少し上手に英語を話せるようになってから来るんだな。」
私はその店員が嫌いになった。彼もまた私を嫌っていた。たまたま近くに英語の分かる日本人労働者がいて、その店員は彼に手で奥の部屋に入ってくるよう合図した。そしてピンクと白のゴムのようなもので覆われたテニスボールの半分くらいの大きさの小さな包みを持って戻ってくると、埃を吹き払い、私にそれを投げつけた。
「欲しいのはこれだろ? これはホステス・スノーボールと言うんだ。お腹が空いてるならこれがいいぞ。お金はいらないから。」
「えっ、ただ?」
私はそれが何で出来ているかわからなかった。パッケージを調べて、ゆっくりと開けて最初の1つを食べてみた。それにしてもなぜ急にあの店員は親切になったのだろう。私には不思議に思えてならなかった。


午後4時ごろ、私は突然激しい腹痛に襲われた。汗がにじみ出てきて何度も嘔吐した。夜の8時近くになって何人かの同僚が気づいた時は、血を吐き、呼吸も困難な状態だった。収容所の監督の川崎氏が運転するステーションワゴンの後ろに乗りながら、私の意識はもうろうとしていた。


いったい何が起こったんだ。私の頭は渦巻く嵐の中で舵を失った凧のようにぐるぐる回っていた。まるで暗闇の中に突き落とされるかのように、説明のできない恐ろしさが私を襲った。助けを求めて大声で叫んでも、誰もいない森の中でむなしくこだまするだけだった。長い時間が過ぎ、濃い霧が薄らぎ始めた時、ドア近くの壁に向かって2人の男が椅子に座っている影が見えた。
「お願いです。教えて下さい。ここはどこですか。あなたたちは誰なのですか。」
私の日本語は彼らには全く通じなかった。私は自分の身を自由にしようと動き出すと、彼らは本能的に助けを呼んだ。何人かの医師と看護婦たちが慌てて入り込んできて、いきなり私に注射針を打ち込んだ。彼らは私を動けないようにすることで誇らしげになり、安堵のため息をついた。私はただここがどこなのか、そして彼らは私に何をしようとしているのか知りたいだけだったのに。